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福岡高等裁判所 昭和46年(ネ)73号 判決

控訴人 塩塚家取

右訴訟代理人弁護士 沖蔵

被控訴人 近見勝二

右訴訟代理人弁護士 木下秀雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し、被控訴人が福岡地方裁判所八女支部昭和四〇年(ヲ)第一六号不動産引渡命令に基づき、福岡地方裁判所久留米支部執行官堀五城より引渡を受けた別紙目録記載の不動産を引渡せ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

≪以下事実省略≫

理由

訴外柳川融資株式会社(以下、訴外会社という。)が福岡地方裁判所八女支部に対し、同庁昭和三二年(ワ)第九三号貸金請求事件の執行力ある判決正本に基づき、控訴人所有の本件不動産につき強制競売の申立(同庁昭和三三年(ヌ)第二九号)をなし、同裁判所が昭和三三年六月二日競売開始決定をなしたこと、被控訴人が昭和三五年一一月一五日右不動産につき競買の申出をなし、同月一六日競落許可決定の言渡を受け、右決定が被控訴人の抗告取下により同年一二月二三日確定したこと、控訴人が同年一一月一五日前記債務名義に表示された執行債権が消滅したことを理由に訴外会社を被告として請求異議の訴(同庁昭和三五年(ワ)第七号)を提起し、同年一二月二三日右強制執行の停止決定を得たが、昭和三七年一〇月一一日右請求異議訴訟において、控訴人敗訴の判決を受けたこと(≪証拠省略≫によれば、仮執行宣言付をもって右強制執行停止決定が取り消されたことが認められる。)、そこで競落人である被控訴人は同年一一月六日同裁判所に競落代金を完納したこと、一方控訴人は前記敗訴判決に対して福岡高等裁判所に控訴(同庁昭和三七年(ネ)第八二九号)を提起し、同年一一月一二日再び右強制執行の停止決定を得、昭和四〇年八月九日右請求異議の控訴審において控訴人勝訴の判決を受けて右判決が確定したこと、これより先の右強制執行停止期間中である同年六月二三日福岡地方裁判所八女支部は、競落人である被控訴人の申立により本件不動産につき引渡命令(同庁昭和四〇年(ヲ)第一六号)を発したことはいずれも当事者間に争いがない。

控訴人は、右引渡命令は強制執行停止期間中に発せられたものであるから違法であるばかりでなく、前記請求異議訴訟における控訴人勝訴の確定判決により、強制執行は終局的に許されないことが確定したから、右強制執行を前提とする右引渡命令は当然無効であると主張する。

ところで、強制競売においては、競落許可決定が確定すれば、代金を支払うことによって競落不動産の所有権を確保し得る競落人の地位は確固不動のものとなるのであるから、競落許可決定確定後に強制執行停止決定がなされあるいは強制執行不許の判決がなされても、一旦確定した競落許可決定の効果に何ら影響を及ぼすものではない。したがって、執行裁判所は、競落人から競落代金の納付があればこれを受領すべきであり、また競落人から競落不動産について引渡命令の申立があれば、該命令を発すべきである。

これを本件についてみるに、控訴人の得た強制執行停止決定および請求異議における強制執行不許の判決は、前記のとおり、いずれも本件不動産についての被控訴人に対する競落許可決定確定後であるから、前記説示のとおり、前記引渡命令はなんら違法、無効ではない。

つぎに、控訴人は、本件不動産中、別紙目録3および4の土地は、農地(竹林)であるところ、本件競落に際しては、福岡県知事の許可がないから、被控訴人に対する競落許可決定は無効であると主張する。

ところで、竹林は、竹林を採ることが目的である普通の場合には農地とはいえず、たけのこの採取が主な目的となっていて、そのために肥培管理が行われているような場合にのみ農地と解すべきところ、≪証拠省略≫によれば、別紙目録3および4の土地は、いずれも南に面した山腹の斜面で、南側麓にかけては主として孟宗竹が密生し、北側山頂にかけては雑木と孟宗竹が雑然と密生し、全体に下草が生い茂って、たけのこ採取のため、手入れないし肥培管理の行われた形跡は認められず、右認定に反する≪証拠省略≫はたやすく措信できず、≪証拠省略≫も右認定の妨げとはならない。

よって、控訴人の請求を棄却した原判決は、一部理由は異なるが結論において相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江啓七郎 裁判官 塩田駿一 境野剛)

〈以下省略〉

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